PROJECTS

JR肥前浜駅前広場 (2021)

佐賀県 鹿島市

肥前浜駅前広場(佐賀県鹿島市)を設計

photo(c) 針金洋介

 「歩車共存空間」・・・駅前広場、そして駅前通りは、歩行者が主役として、車や自転車が配慮して通行する歩車共存空間(Shared Space/Street)の考え方でデザインすることを徹底した。従って、車のためのロータリー構造は選択せず、縁石などの段差はなし、車路と歩行者路の素材も区別をなくし、駅前広場にわずかにピンコロ舗装の曲線が、車の侵入を抑止したい境界を描いている。

 

 「ヴォイド」・・・また駅前広場には、駅舎の庇下空間などから様々な活動がにじみ出し広場に展開されることが期待されていた。そこで、広場空間の重要なデザインテーマとして広場中央にヴォイドを据えることとした。

 駅前広場が駅舎北側に広がる田園や南側の空き地の自然地など自然に囲まれた立地であることを活かし、この地域に在来の植物である種々の高木群を周りの自然から広場に侵入してくるように配し、広場の囲まれ感を構築した。既存の駐輪場は、広場をより広くできるように建て替えとし、広場の囲まれ感構築に貢献するよう広場東側に配置した。そうして広場の囲まれ感をつくる境界部のデザインに注力することで、中央のヴォイドをつくりだすようにした。

 祭典時には車の通行も廃され、活動の活気がみちあふれる、完全に人間中心の空間になる。平日には、静けさが基調となり、広々とした、のびやかな空間、そこに野鳥のさえずり、時折通りがかる電車の音があり、余計なもの以外何もない空間が感性を刺激する。

 

 「有機的な舗装パターンと素材のエイジング」・・・肥前浜駅全体の主題は、歴史的建造物を保存と活用であった。駅前広場のデザインもそれと歩を一にする形で、昭和20年代の古写真に映された小さな砂利が広がる自然的でのびやかな風景を手掛かりとした。浜駅舎や伝建地区と調和し、地域の古くからの歴史を感じさせる自然石砕石(手に入る中で最も敷地から近いところの川砂利)を採用した脱色アスファルトとした。

 また高木植栽のマルチングにも同じ自然石砕石を用いて、マルチングの中央にいくほど粒径が大きくなる意匠を施している。脱色アスファルトの長年のエイジングとともに、表面の砕石が露わとなり、砂利の広場が広がる中で、マルチング内の大きな石がアクセントとなることを意図している。また砂利マルチングは表面の雨水を植栽地に浸透させる機能も有している。

有機的な舗装パターンを意図し、高木マルチングの有機的な円の形状と配置、石の粒径のグラデーションにより舗装パターンの形成を計画した。

 

 広場完成後、毎月開かれるようになった朝市、観光列車到着時のおもてなしのイベントなど様々な祭典に駅前広場が使われるようになっている。年月を経るにつれ、素材がエイジングし、高木が成長し、駅前の風景がさらに成熟していくことが楽しめる整備となった。

 

さらに詳しい内容はこちら。

architecturephoto

 

https://architecturephoto.net/138696/

 

photo(c) Takebayashi Landscape Architects

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photo(c) カネダセイノスケ

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photo(c) カネダセイノスケ

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photo(c) 針金洋介

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photo(c) Takebayashi Landscape Architects

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photo(c) Takebayashi Landscape Architects

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photo(c) 針金洋介

photo(c) 針金洋介


竣工 | 2021.3

所在地 | 佐賀県鹿島市浜町

内容 | JR肥前浜駅交流拠点施設 広場・外構設計・設計監理

クライアント | 佐賀県及び鹿島市

広場・外構設計(共同)|建設技術センター 懸樋喜康・松尾和人

建築設計監修・監理肥前浜駅デザイン検討プロジェクトチーム/三島伸雄・平瀬有人

景観デザイン・外構設計監修肥前浜駅デザイン検討プロジェクトチーム/高尾忠志・増山晃太

建築設計三原建築設計事務所(織田淳)

構造設計(駐輪場)yAt構造設計事務所(森部康司)

照明デザイン協力:LIGHT・PLAN(山本博之)

施工 | 中野建設(広場・外構)・植松建設(駐輪場)

写真 | 針金洋介・カネダセイノスケ・Takebayashi Landscape Architects