PROJECTS

大日止昴小水力発電所 (2017)

宮崎県 日之影町

電力事業を継続し地域経済に貢献できる強固な設計

 現場は、五ヶ瀬川水系が作った深い峡谷地形が特徴的な日之影町に位置する。明治時代に集落住民の元手によって作られた農業用水を、農業用水利は継続しつつ、小水力発電という現代の地域の要請としても活用するチャレンジングな事業。補助金は入っておらず、地元の大人(おおひと)用水組合を母体とした「大人発電専門農協」の出資による事業である。収益は用水路を含む地域の環境維持保全や地域振興に使われる。一連の小水力発電構造物の中で、水車と制御盤を格納するメインの小屋を設計した。

 

 小水力発電のコンサルティングや実装を行うリバー・ヴィレッジ社から、地域のシンボルとなる建築としたい、日之影町で昔から使われてきた地場産石材を使いたい、という要望を受けて、地域に現存する石蔵を小水力発電所小屋として再解釈をするデザインとした。石材は、かつて石蔵として使われ現在は廃材となっていたものを収集し、再利用した。石壁より上部は県産木材を活用した。土木・建築の施工は、現場にほど近い位置に会社を構える吉野建設に担当して頂いた。階段は、施主を含む関係者の手作りで仕上げた。

 

 小屋の位置は、敷地に隣接する田圃に影響を与えないように、また、背後の急斜面から降りてくる水道管を受け止められる範囲で注意深く位置、角度が設定された。基盤の石積みは既存の野面積みが連続するように新たに建設した。地域に残る石蔵のスケール感覚を守ることを重視し、できるだけ多くの発電機器を小屋内に収める検討を繰り返し、外に出して問題ない機器で、入りきらないものは外に出した。また近隣への騒音がないよう吸音や音漏れのない設計を徹底した。そして事業が永い未来に渡り継続されるよう、強固な設計を目指した。


竣工 | 2017.11

所在地 | 宮崎県西臼杵郡日之影町

内容 | 小水力発電所小屋の基本設計・実施設計・設計監理

クライアント | 株式会社リバー・ヴィレッジ

設計(共同)Life & Work一級建築士事務所 石川裕子、九州大学景観研究室

施工 | 有限会社吉野建設

写真 | Age-Cox  Takashi Kuriyama